2010-02-03

35歳の教科書

前杉並区立和田中学校校長 藤原和博氏が書いた本です。成長社会から成熟社会になるにつれて、モデルとなる人材が存在しなくなり、みんな一緒から、一人一人に考え方がシフトしてくる中でどのような人生戦略を考えるべきか、について書いています。

多くの年収を稼いでいても、実労働時間で換算すると時給がどのくらいになるのか。それだけ仕事以外の時間を食いつぶして人生を仕事に邁進させて来た成長社会における働き方と、成熟社会の働き方、生き方は違うのかもしれないと思い始めました。

何か新しいものを購入して幸せになる、ということはあっても常にそれで心が豊かになるかと言えばそうではないのも事実。一方当然だがお金が無ければ生きていけないのだから最低限の収入は当然得なければならない。果たしてそういう仕事があるのだろうか、というのがまず私が考えなければならないポイントだと思っています。

仕事をしていると正直面白い、と思っています。自分に対するチャレンジ、自分の限界を知ることの楽しさ、そしてそれを乗り越えた時の達成感、それをプロジェクトメンバー皆で達成した時の感動はひとしおです。だから辞められない。確かに中毒のようなものだな、と思いつつ、それでも自分が楽しいと思えることに時間を使うことに何のためらいもありません。いや、正確にはためらいもありませんでした。

結婚して家族が出来、妻との時間を一緒に過ごしていると、やはりこの時間が自分の人生にとってどれだけ貴重なのか、ということを感じます。それは今まで自分に無かった考えや行動、そしてそれが自分に、そして彼女にも影響し、一緒に人生という本のページをめくりながら進めていくことにこの上ない楽しみと喜び、そして自分の居場所を実感しています。しかしながら仕事で遅くなる自分の生き方がこのままで良いのか、とも思います。

終身雇用でもありませんから、会社に良いように使われておしまいです。もちろんそうならないように皆が一生懸命頑張って仕事をするのですが、常に成長し続けていた時代が終わり、今まであり続けた成長のパイがそこかしこに広がっていないことを明らかに実感する現代においては地球上のどこまで行ってもそのうちパイは見つけられなくなるのだと思います。宇宙や地中、または海中といった今までの人間の生活圏外に可能性を見出さない限り・・・。

でもパイを見つけ、成長し続けることが全人類にとって幸せなことなのか、は正直私も分かりません。確かに私は宇宙に進出し、地球の青さを実感し、ニューフロンティアを見出すことできっと感動することが出来るとは思っています。人生においてどれだけ感動出来るか、が生きてきた証なのだとも思うので。ただ、成熟した社会において多様化する価値観、複雑化する世界の中で自分らしさを見出すこと、そして様々な人々の十人十色な「らしさ」を認め合える生き方、それもまた生きてきた証なのかもしれない、と思い始めてきました。

この本を全て読んで、自分なりに考えを持った時、もしかしたら私は今の会社に在籍していないかもしれません。それでも、この先生まれてくる命のことを考え、自分の優先すべきものが変わった中では、きっと充実した人生を送ることが出来ると思うし、死ぬ時に後悔しない人生だったと振り返ることが出来るのではないか、と思います。

読み終わった時の自分の考えが、自分としても楽しみです。